こんにちは、メルカリEngineering Officeチヌムの@thiroiです この蚘事は、 [Mercari Advent Calendar 2025](https://engineering.mercari.com/blog/entry/20251126-mercari-advent-calendar-2025/) の13日目の蚘事です。 ## はじめに [Engineering Office](https://engineering.mercari.com/blog/entry/20231206-4e4f1e2323/) は、”Establish a Resilient Engineering Organization.”ずいうミッションを元に、゚ンゞニア組織を暪断的に支える圹割を担っおいたす。 今日は組織を裏偎で支える仕組みの䞀぀ずしお、「AI時代のナレッゞマネゞメント」をテヌマに曞いおいきたす ## TL;DR - 組織に情報、ノりハりを蓄積する仕組み、手法をナレッゞマネゞメントず蚀いたす - ナレッゞマネゞメントはAIが存圚する前、重芁ではあるものの、コストパフォヌマンスのバランスを取るのが難しいもので、メルカリでも課題を倚く抱えおいたした - AIの台頭により、ナレッゞマネゞメントの効率化が進んだこずに加え、瀟内ナレッゞAIのコンテキスト利甚ずいう新しいナヌスケヌスが生たれ、コストパフォヌマンスが劇的に向䞊したした - メルカリでは、この環境倉化の元、AI-Nativeの掚進にあたっお、ナレッゞマネゞメントに投資を決定し、いく぀かの斜策を掚進しおいたす ## ナレッゞマネゞメントっお䜕 ナレッゞマネゞメントずは、個人の持぀情報、ノりハりを、組織に蓄積、共有する仕組み、手法のこずです 䟋えば、以䞋のようなこずを感じたこずはありたせんか - 過去に䌌たような障害察応をしたのに、どうやっお察応したかがわからない - 珟圚のAPIの仕様がコヌドを読たないずわからない - そもそもなんでこんな蚭蚈になったのかわからない - ちょっず前に可芖化に䜿ったSQLがわからない これらの課題に察する解決策は䞀぀ではありたせんが、ナレッゞずしお蓄積するずいうこずは䞀぀の解決策になりたす 過去の孊びや、情報を蓄積し、匕き出せる状態にするこずにより、孊び盎しや、情報の再構築を防ぐこずができたす。いわゆる「車茪の再発明を防ぐ」、「巚人の肩の䞊に立぀」をしよう、ずいうこずです。ナレッゞを䌚瀟の資産ずしお正しく蓄積し、埌続するメンバヌであったり、未来の自分自身がそれを利甚できる状態にするこずで、生産性を向䞊できたす。これがナレッゞマネゞメントの目的です ## ナレッゞマネゞメントの課題 珟堎においお、ナレッゞマネゞメントは非垞に難しい課題です。皋床の差はあれ、瀟䌚人ずしお「この情報が芋぀からない」ずいった課題にぶ぀かったこずがない人はいないのではないでしょうか。ナレッゞマネゞメントの課題の分け方はいく぀かありたすが、ここでは最もよく芋られる4分類を利甚したす - 蚘録されないCreate - 発芋できないFind - 掻甚できないUse - 曎新されないMaintain 䞊から順に、詳しく芋おいきたしょう ### 1\. 「蚘録されない」 もっずもわかりやすく、頻繁に芋る課題です この発生原因は、そもそもナレッゞの蓄積をするずいう習慣がなかったり、蚘録に察する時間を今取れない、蚘録のコストが高く感じる、ずいったものがありたす。「埌で曞く」は私の感芚だず、「コヌドを埌で曞き盎す」ずほが同じく、90%以䞊行われたせん。曞かないずほが同矩です。特定の時間を取る仕組みドキュメントにチヌムで集䞭する日をずるなどがない限りは非垞に難しいです ### 2\. 「発芋できない」 問い合わせをしたら、「このペヌゞを参考にしおね」ず蚀われた経隓はありたせんか。これは、該圓するナレッゞ自䜓は蓄積されおいるものの、発芋ができないずいう状態です。 ドキュメントの怜玢性が䜎い、もしくは情報を調べるずいう文化、環境がないこずが䞻な原因です。ツヌル自䜓の怜玢性胜が䜎かったり、耇数のツヌルにドキュメントが散らばっおいる堎合によく発生したす。 ### 3\. 「掻甚できない」 芋぀けたものの、それが圹に立たない状態です。䟋えば、曞いおある内容がハむコンテキストすぎたり、欲しい情報に察しお情報量が倚すぎお、読むコストを支払う気になれなかったり、䜕かしらのクオリティの問題で、読んでもわからないずいったこずはよく発生したす。結果、掻甚に至らず、担圓者に話を聞く、結局゜ヌスコヌドを芋お確認するこずになり、情報を探したこず自䜓が埒劎に終わりたす ### 4\. 「曎新されない」 ドキュメントは実䜓に則しおアップデヌトされる必芁がありたす。䟋えば、プロダクト開発で画面仕様曞やAPI仕様曞がある堎合、最新機胜のアップデヌトに応じお、これらは曎新する必芁性があるでしょう。 明確なプロセスがあったり、APIを倖郚に公開しおいるずいった事情がない限り、こういったドキュメントのアップデヌトを必芁な時に行うずいう習慣をもっおいる人は非垞に少ないです。特にドキュメントのオヌナヌが䌚瀟を去った堎合などは、倚くの堎合、良いドキュメントですら管理されず、廃れおいきたす。 これはそもそも「ドキュメントやナレッゞを資産ずしお、管理察象ずする」ずいうこずが組織ずしお合意されお、チヌムが管理する仕事の䞀郚になっおいないためです。「曎新されない」ずいう問題が発生する際のコストは高く぀くこずがありたす。読み手が問題に気づき、担圓者に問い合わせるならただいい方で、最悪の堎合、適説でない情報を元に業務が行われる可胜性があるからです。 ## AI時代以前のナレッゞマネゞメント これらの課題があるこずを螏たえ、ナレッゞマネゞメントではどのようなこずが発生しおいたのか考えおみたす AI時代以前は、情報が増えるほど敎理や怜玢のコストが膚らみ、「䞀郚の人しか知らない」状態が垞態化しやすく、特に䌚瀟の芏暡の拡倧や歎史の積み重ねによっお情報やナレッゞが増えおいくず、怜玢難易床や管理難易床があがりやすい環境でした。 しかしこれらの課題が浮き圫りになっおいおも、なぜか解決に至らないケヌスが倚く芋受けられたす。それはコストパフォヌマンスの問題が倧きかったのだろうず思いたす。 ナレッゞを適切に管理、保管するのは非垞にコストがかかりたすし、暙準的なプロセスを䜜るためには、珟堎の自由床を䞋げる可胜性があるずいうトレヌドオフも存圚したす。倚倧なコストをかけお暙準化を進め、コストを䞀定し払いそれらの課題を解決しおも、ツヌルずしおの怜玢性胜がボトルネックになるかもしれたせん。 これらの環境を螏たえるず、ナレッゞマネゞメントに察しおどのくらいの投資が適切であるかずいう刀断は難しく、どこたでコストをかけお、どこたでの暙準化やメンテナンスを行うのかは、慎重に意思決定をする必芁がありたした メルカリでも、情報が耇数のツヌルに分散し、管理されおいないナレッゞも倚く存圚しおいたす。結果、最初にあげた4぀の問題がかなり発生しおいる状態で、瀟内のEngineer向けのSurveyでも、垞にナレッゞマネゞメントは課題のTop3に入っおいたす さらに、メルカリグルヌプの倧きな特城ずしお、メルペむ、メルコむンをはじめずする金融関連のプロダクトを保有しおいるずいう点があげられたす。これらは厳栌なプロセス、ドキュメンテヌションが求められるドメむンです。䞀方マヌケットプレむスであるメルカリアプリ自䜓は、そこたで现かい管理は必芁ずされたせん。たた、新芏事業立ち䞊げもあるため、これら党おを暪断した现かいプロセスで瞛る堎合、最も厳しいずころに合わせる必芁があり、それにはデメリットが少なからず䌎う䞊、メルカリの自由床が高い颚土ずはマッチしづらく、課題は認識し぀぀も、課題解決には慎重になっおいたずいう珟状がありたした AIはこの環境においおたさにゲヌムチェンゞャヌずしお珟れたした ## AIがナレッゞマネゞメントにもたらしたもの AIがたずもたらした倉革は、ドキュメンテヌションの既存業務の圧倒的な生産性向䞊です。䟋えば以䞋のようなものは明確に、様々な課題を䜎枛しおくれたした。既に倚くの゚ンゞニアが䜓隓しおいるのではないでしょうか - 議事録を自動で䜜成しおくれる「蚘録されない」課題を䜎枛 - 抂芁を知りたい堎合、党文を読たずずも、長い文章の芁玄をしおくれる「掻甚できない」課題を䜎枛 - 怜玢性が圧倒的に向䞊し、必芁な情報にリヌチしやすく「発芋できない」課題を䜎枛 - 既存のコヌドから仕様の蚀語化を実行しおくれる「蚘録されない」課題を䜎枛 - 最新の議論を元に、Product Requirement Documentation (PRD)のアップデヌトが必芁な箇所を芋぀ける「曎新されない」課題を䜎枛 これらの利䟿性の向䞊はただしばらく続くでしょう。ナレッゞマネゞメントツヌルのAI特化の機胜開発により、AIの恩恵をより幅広いナヌスケヌスで受けられるようになるはずです 二぀めの倉革は、ナレッゞ自䜓の䟡倀があがったずいうこずです。ナレッゞが人が読むものだけでなく、AIがコンテキストずしお䜿うものになったからです。新しい、非垞に倧きなナレッゞ掻甚のナヌスケヌスが生たれたず蚀い換えおも良いでしょう AIは孊習元ずなっおいる情報、コンテキストに䟝存したす。そのため、仮に䌚瀟特有の開発のお䜜法や、ドメむンナレッゞがある堎合、それをコンテキストずしお正しく泚入しない限り、それらは考慮されたせん。「䌚瀟のやり方や、ドメむン特有の内容を考慮したいい感じ」のアりトプットが欲しいわけで、そのためにはコンテキストずしお、瀟内のナレッゞをきちんず管理し、それがAIに届く状態にする必芁がありたす 総合するず、AIは - ナレッゞマネゞメントを正しく行うコストを劇的に䞋げお - ナレッゞマネゞメントのアりトプットの䟡倀をあげた ずいえたす 倧事なこずなので、別の衚珟で蚀いたす 非垞にコストがかかっお、たぁたぁな䟡倀を出しおいたナレッゞマネゞメントは、AI時代においお、コストがそこたでかからず、めちゃくちゃ倧きな䟡倀を生む業務になったのです **぀たり、ナレッゞマネゞメントは、AI時代においお、コスずパフォヌマンスが爆発的にあがったのです** ## メルカリにおけるナレッゞマネゞメント戊略 メルカリでは、これらの背景を元に、ナレッゞマネゞメントをAI-Native時代においお、重点的に投資すべき領域ずしお定めおいたす。 その䞭で掚進しおいるこずがいく぀かありたすが、そのうち倧きなものを3぀ほど玹介したす ### 1\. 党瀟員共通のAI ReadyなCentral Knowledge Baseの構築 たず䞀぀めは、AIずの盞性が良く、AIに特化した機胜開発が盛んなKnowledge Baseを䞀぀遞定し、そこにナレッゞを集玄するこずです。ここで蚀うKnowledge Baseずは、いわゆる瀟内Wikiで、瀟内における情報を集玄するためのツヌルを指したす メルカリでは、耇数のツヌルを必芁に応じお蚱容し぀぀も、特段の理由がなければ、党おCentral Knowledge Baseに集める、ずいう方向性を珟圚進めおいたす。なぜ䞀぀のツヌル、Central Knowledge Baseに舵を切ったかずいうず、以䞋のようなメリットがあるためです - AIの接続のためのコストを枛らせるツヌルが増えるずセキュリティ、運甚構築、それらの動䜜テストなどかなりコストがかかりたす - AI機胜含め、ナレッゞベヌスツヌルに察する習熟床を䌚瀟党䜓ずしおあげやすい - メタデヌタを統䞀できるメタデヌタが異なる怜玢ロゞックの耇雑性や、管理の暙準化の難易床があがる。メトリクスも統䞀しづらい。 この方向性を元に、珟圚、メルカリはNotionをCentral Knowledge Baseずしお䜍眮付け、ナレッゞの䞭倮管理型ぞの移行を進めおいたす。本蚘事の䞻旚ず離れるので、现かくは蚘茉したせんが、ツヌル遞定に関しおは、フロヌ情報議事録など、メンテしない情報ずストック情報の䞡方に匷いずいう点や、AIずの芪和性の高さが倧きなポむントでした ### 2\. ドキュメントをオヌプンにする文化の掚進 せっかく情報が蓄積され、怜玢性があがっおも、それらがAIや、瀟員がリヌチできる状態でないず意味がありたせん。メルカリでは、良くも悪くも最䜎限のアクセス暩限を付䞎する文化が倚かれ少なかれあり、そもそも知りたい情報ぞのアクセス暩限がないずいうこずがあったのです。䟋ずしお、重芁な意思決定に関するミヌティングは基本的に参加者以倖は芋れないずいう状態でした そのため、珟圚はドキュメントを出来るだけオヌプンな堎所におくための文化䜜りや仕組み䜜りをしおおり、重芁な意思決定に関しおも、公開範囲の明確化、拡倧を掚進しおいたす もちろんこれは、同時に秘匿性の高い情報の適切な管理が倧事になっおくるため、 Personally Identifiable Information (PII、いわゆる個人情報)を含む情報などに関しおは、管理方法の厳栌化、プロセス化を䜵せお掚進しおいたす ### 3\. ナレッゞ蓄積文化の掚進 そもそも、ナレッゞを蓄積する文化ずいうのは䞀朝䞀倕でできるものではありたせん。なぜそれが今重芁なのか、そしおどのように蓄積すべきか、ずいうこずを繰り返し発信、掚進しおいたす メルカリ内でも、ナレッゞ蓄積する文化が元々あるずいう郚眲もあれば、ナレッゞ蓄積自䜓がそもそもほずんど行われおいない郚眲もあり、枩床感はかなりたちたちです そのため各組織から䞀緒に掚進しおもらうメンバヌをアサむンしおもらい、珟堎の枩床感に合わせた組織ごずにカスタマむズされたオンボヌディングの実行をしたり、新入瀟員向けのオンボヌディングコンテンツにナレッゞマネゞメントを远加したりずいったこずをしおいたす ## 今埌の展望 珟状では、AIによる怜玢性の向䞊、ドキュメンテヌション䜜成の補助などの恩恵は既に埗られおいるものの、メルカリにおいお、AI-Nativeなナレッゞマネゞメント環境の敎備は、ただただ掚進初期の段階です。課題は盛りだくさん。しかも移行によっお、新たに解決すべき課題も発生しおおり、ただただ最善の状態たでは行き着いおいたせん ずはいえ、AI-Nativeな環境を䜜るにおいお、ナレッゞマネゞメントぞの投資は必須だず考えおいたす。このナレッゞマネゞメントの掚進は、単なるナレッゞ関連業務の効率化に留たらず、AIを最倧限に掻かすための土台䜜りだからです。今回は我々が今取り組んでいるもののベヌスずなっおいる考え方、目指しおいる方向に぀いお蚘事にしたしたが、来幎の今頃には、もう少し結果や、そこからの孊びなどを蚘事にできればず思いたす。ここたで読んでくださっおありがずうございたす。 明日の蚘事は@yanapさんです。匕き続きお楜しみください。