- エンジニア目線、[[技術的負債]]についてはよく語られるが技術面以外にも負債はあるよなーということで整理してみた
## プロダクト負債の定義
施策のリードタイムを長くさせる要因
リードタイムを短くするために改修が必要な箇所の対応にかかるコスト
- [[技術的負債]] の定義を参考にプロダクト負債に拡張することを考える
- 技術的負債は開発者視点で開発効率・開発者体験が低下する要因を指す
- プロダクト負債はプロダクトチーム視点でプロダクトチームの効率・体験を低下させる要因と捉えることができる
- プロダクトチームの効率・体験を低下させる要因とはつまり施策のリードタイムを長くさせる要因
## プロダクト負債の種類
### 技術的負債
- **コードの品質問題**: 冗長なコード、重複、不適切な設計パターン
- **レガシーシステム**: 古いアーキテクチャや技術スタックによる制約
- **テスト不足**: 自動化テストの欠如によるバグの発生リスク
- **ドキュメント不足**: 知識の属人化、新メンバーの学習コスト増加
### デザイン負債
- **一貫性のない UI**: 異なるデザイン要素やパターンの混在
- **アクセシビリティ問題**: 多様なユーザーへの配慮不足
- **複雑な操作フロー**: 必要以上の操作ステップ
- **デザインシステム不在**: 再利用可能なコンポーネントの欠如
### 機能的負債(仕様的負債)
- **機能の肥大化**: 使われていない機能の存在
- **代替手段の乱立**: 同じ目的に複数の方法が存在
- **中途半端な機能**: リリースしたが十分に育てられなかった機能
- **不明確な優先順位**: 機能間の関係性や重要度の曖昧さ
## プロダクト負債が与える影響
### ユーザーへの影響
- **使用の複雑さ**: 学習コストの増加、操作ミスの発生
- **パフォーマンス低下**: 遅いロード時間、反応の遅さ
- **信頼性への疑問**: バグや不具合による信頼低下
- **目的達成の阻害**: 本来のゴールが達成しづらくなる
### 開発チームへの影響
- **開発速度の低下**: 新機能追加や改善に時間がかかる
- **モチベーション低下**: 技術的な面白さや達成感の減少
- **トレードオフの増加**: 短期的修正と長期的解決の板挟み
- **リソース配分の歪み**: バグ修正や負債返済に時間を取られる
## プロダクト負債はなぜ生まれるのか?
### 時間とリソースの制約
- **短期的な納期プレッシャー**: リリース期限を優先し、品質や設計を妥協
- **リソース不足**: 適切な人員や技術的資源が不足している状況での開発
- **技術的検証の不足**: PoC(概念実証)から本番への移行が急速すぎる場合
### 意思決定とプライオリティ
- **短期的な成果重視**: 長期的な持続可能性より短期的な成果を優先
- **機会費用の判断**: 「今は負債を抱えてでも市場に出す」という戦略的選択
- **ビジネス要求の頻繁な変更**: 方向性の転換による設計の歪み
### 技術的要因
- **技術の急速な進化**: 新技術の登場により既存実装が陳腐化
- **初期設計の限界**: 将来の拡張性を十分に考慮していない設計判断
- **知識とスキルのギャップ**: チームの技術的能力と要求の間のミスマッチ
### 組織的要因
- **知識の属人化**: ドキュメント不足や知識共有の欠如
- **チーム間のコミュニケーション不足**: 異なる部門間の連携不足
- **オーナーシップの欠如**: 誰も責任を持って改善しない領域の発生
- **チーム構成の変化**: メンバーの入れ替わりによる継続的な改善の中断
### プロセス上の問題
- **品質基準の未定義**: 「十分に良い」の定義が曖昧
- **テスト文化の欠如**: 自動テストやQAプロセスが不十分
- **レビュープロセスの形骸化**: コードやデザインレビューが適切に機能していない
- **技術的負債の見える化不足**: 問題が可視化されず優先度が下がる
## プロダクト負債の管理方法
### 可視化と測定
- **負債の特定**: 現存する負債を列挙・分類する
- **優先順位付け**: 影響度と解決難易度でマッピング
- **メトリクスの設定**: 負債の量を測定する指標の設定
- **定期的なレビュー**: 負債状況の継続的な把握
### 解決アプローチ
- **計画的な返済**: スプリントごとに一定の負債返済時間を確保
- **リファクタリング**: 新機能開発と並行した継続的改善
- **段階的な置き換え**: 大規模な書き換えではなく部分的な改善
- **テスト駆動開発**: 新たな負債発生を防ぐ開発プラクティス
### チーム文化の醸成
- **品質意識の共有**: 短期的な速度より長期的な持続可能性を重視
- **技術的意思決定の透明化**: 負債を生む判断の背景を共有
- **学習機会の創出**: 良い設計や実装についての知識共有
- **ビジネス価値との連携**: 負債返済の価値をステークホルダーに説明
## チームでの議論ポイント
1. 現在の最も大きなプロダクト負債は何か?
2. それらがユーザー体験と開発効率にどう影響しているか?
3. どのような優先順位で取り組むべきか?
4. 日常の開発プロセスでどう負債の増加を防ぐか?
5. 負債返済のための時間とリソースをどう確保するか?