## Summary この本は、消耗的な競争から脱却し、独自の戦略で生き残るための「競争しない競争戦略」について解説しています。著者は、リーダー企業と「棲み分ける」か「共生する」ことが重要だと述べています。 **3つの戦略:** 1. **ニッチ戦略:** 競合との直接競争を避け、特定の市場に資源を集中する。 * 大企業が見過ごしている市場や、大手に支配されていない市場を狙う。 * 売上高よりも利益率を重視する。 * 大手企業の参入を防ぐには、市場規模・利益率を大きくしすぎず、市場を急速に立ち上げない。 * 質的コントロールと量的コントロールが武器となる。 * **ニッチ戦略の種類:** * 技術ニッチ: 大手が持っていない技術で市場を開拓。 * チャネルニッチ: 大手が追随できないチャネルを押さえる。 * 特殊ニーズニッチ: 特殊なニーズに対応。 * 空間ニッチ: 限られたエリアに資源を集中。 * 時間ニッチ: 限られた時間に事業を集中。 * ボリュームニッチ: 市場規模が小さすぎるため大手が参入してこない。 * 残存ニッチ: 大手が撤退した市場で利益を追求。 * 限定量ニッチ: 供給量を絞りプレミアム感を出す。 * カスタマイズニッチ: 完全オーダーメイドで提供。 2. **不協和戦略:** リーダー企業が同質化戦略を取りにくい状況を作り出す。 * リーダー企業の強みを弱みに、弱みを強みに転換する逆転の発想が必要。 * リーダー企業の競争の源泉を負債化していく。 * 顧客を教育し、情報の非対称性を下げ、バリューチェーンをアンバンドリングする。 * **不協和戦略の種類:** * 企業資産の負債化: リーダー企業の資産を競争上価値のないものにする。 * 市場資産の負債化: リーダー企業の製品・サービスや顧客側の資産を価値のないものにする。 * 論理の自縛化: リーダー企業のこれまでの論理と矛盾する戦略を打ち出す。 * 事業の共喰化: リーダー企業の既存事業と共喰い関係にある製品・サービスを出す。 3. **協調戦略:** 競合企業と競争せずに共存を図る。 * **協調戦略の種類:** * コンピタンス・プロバイダー: コア・コンピタンスを競合企業にも提供。 * レイヤー・マスター: 競合企業の一部の機能を代替し、寡占を作る。 * マーケット・メーカー: 新たな機能で入り込み、市場を形成するプラットフォームを作る。 * バンドラー: 競合品も自社製品に取り込み、顧客価値を高める。 **その他重要なポイント:** * 競争のメリット・デメリットを理解する。 * ポーターの5つの競争要因、嶋口のリーダー企業戦略定石を理解する。 * ニッチ戦略をとる企業の成長戦略として、マルチニッチ戦略とチャレンジャーへの転換がある。 * ニッチ企業は、売上高よりも利益率、顧客シェア、顧客満足度などを重視する。 * 環境変化を先取りし、継続的に戦略を適応させていく必要がある。 これらの戦略を理解し、自社の状況に合わせて適切な戦略を選択・実行することで、競争の消耗戦から脱却し、持続的な成長が可能になると著者は主張しています。 ## Metadata * Author: [山田英夫](https://www.amazon.comundefined) * ASIN: B011BK4TQI * Reference: https://www.amazon.com/dp/B011BK4TQI * [Kindle link](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI) ## Highlights 「競争しない」ためには、業界のリーダー企業と「棲み分ける」か「共生すること」が必要である。 — location: [12](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=12) ^ref-43888 --- 競争するメリットとして、企業の面からは、①企業の能力向上、②市場の成長、③組織の活性化が挙げられ、一方、顧客の面からは、④ニーズの多様化への対応、⑤価格の低下などが挙げられる。 — location: [202](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=202) ^ref-52995 --- ベルギーの動物学者ヴァン・ベネーデンは、共生者(guest)が宿主(host)に害を与える場合を「寄生(parasitism)」、共生者だけが利益を得て宿主は有害でも有益でもない場合を「片利共生(commensalism)」、双方に利益を与える場合を「相利共生(mutualism)」と定義した( 26)。 — location: [338](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=338) ^ref-54558 --- 完全競争から遠い状態を作り上げるほど企業は高い収益性を享受でき、それを判断するために、①既存企業間の競争(業者間の敵対関係)、②売り手の交渉力、③買い手の交渉力、④新規参入の脅威、⑤代替品の脅威、という5つの競争要因を分析することを示した( 30)。 — location: [357](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=357) ^ref-5432 --- より実践的なリーダー企業の戦略定石として、嶋口は、①周辺需要拡大、②同質化政策、③非価格対応、④最適シェア維持の4つを示した( 42)。 — location: [414](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=414) ^ref-63498 --- ニッチ戦略とは、「競合他社との直接競合を避け、棲み分けした特定市場に資源を集中する戦略( 1)」の — location: [541](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=541) ^ref-9022 --- ニッチ市場が生まれるのは、市場の発展初期の段階では大企業が見過ごしている市場( 2)、成熟市場では一定数の顧客が存在するが大手に支配されていない市場( — location: [552](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=552) ^ref-16881 --- ば、「差別化はリーダーと戦う戦略であり、ニッチはリーダーとは戦わない戦略である( 4)」。 — location: [558](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=558) ^ref-48591 --- 一般には、コスト・リーダーシップは経営資源が業界で最大のリーダー企業がとれる戦略、差別化はリーダーの座を狙うチャレンジャー企業の戦略、そして集中がニッチ企業(ニッチャー)の戦略と言われている。 — location: [571](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=571) ^ref-21738 --- ニッチ戦略は、売上高よりも利益率を重視する戦略である。 — location: [582](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=582) ^ref-17808 --- リーダー企業は企業規模が大きいことから、固定費も下位企業より大きい傾向がある。そのため利益率が低い分野に参入すると、その固定費だけで赤字になってしまうので、そうした分野には同質化をしかけないことが多い。 — location: [622](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=622) ^ref-62288 --- ニッチ企業が大手企業を参入させないためには、①市場規模をあまり大きくしない、②利益率をあまり高くしない、③市場を急速に立ち上げないという戦略が求められる。この3つは、大手企業で求められていることのまったく逆と言える。 — location: [696](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=696) ^ref-13798 --- ニッチ企業は、参入障壁を高める質的コントロールと、市場規模の量的コントロールの2つが武器となる。 — location: [705](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=705) ^ref-58604 --- 技術ニッチとは、リーダー企業が技術を持っていない分野を開拓し、リーダー企業の相対的に豊富な資源をもってしても、その市場を攻略できない戦略を指す。 — location: [754](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=754) ^ref-34295 --- 技術ニッチ戦略の場合、マニーや根本特殊化学のように、大手も追随できないようなハイレベルな技術を開発し続けることが重要である。しかし、巨額な研究開発投資を続けないと成果が見込めない分野もあり、そこでニッチ企業が大手企業と伍していくことは難しい場合もある。 — location: [891](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=891) ^ref-20582 --- チャネル・ニッチとは、リーダーが追随できないチャネルを押さえ、そのチャネルを通じて限られた市場の寡占を作る戦略である。 — location: [905](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=905) ^ref-56205 --- 特殊ニーズ・ニッチとは、一般的ではない特殊なニーズに対応した技術・サービスにより、限定された市場を獲得する戦略である。 — location: [958](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=958) ^ref-22368 --- 空間ニッチとは、限られたエリアだけを事業領域として資源集中することで、その地域に関しては、大手企業であってもシェアを取れない状況にしてしまう戦略である。 — location: [991](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=991) ^ref-33130 --- 時間ニッチとは、限られた時間だけに事業が集中するため、固定費の高い大企業は、需要の閑散期に固定費が回収できなくなることから、なかなかその事業に参入できなくなる戦略を指す。 — location: [1035](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1035) ^ref-16870 --- ボリューム・ニッチとは、リーダー企業が参入するには市場規模が小さすぎ、それゆえにリーダー企業が参入してこない結果、ニッチ企業が利益を享受できる市場である。 — location: [1067](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1067) ^ref-49892 --- 残存ニッチとは、製品ライフサイクルの衰退期に入って市場が縮小し、もはや利益が出なくなったため、大手企業が撤退していった結果、残った企業が、限られた規模の中で利益を追求する戦略を — location: [1101](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1101) ^ref-28356 --- には、「単に残存し続けているだけでなく、縮小する市場の中で、生き残るためのビジネスモデルを構築することが必要( 29)」と — location: [1105](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1105) ^ref-9526 --- 限定量ニッチとは、生産量・供給量を意図的に絞ることでプレミアム感を出し、利益を確保する戦略である。リーダー企業がやりにくいのは、仮に供給量を限定しても一定の固定費がかかるので、収益的には貢献しない可能性があることだ。 — location: [1166](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1166) ^ref-9851 --- ボリューム・ニッチと限定量ニッチの違いは、前者は市場規模自体が小さいケースを言うのに対して、後者は事業的には量産が可能であるにもかかわらず、あえて供給量をコントロールして市場規模を小さくとどめ、利益を獲得しようとするものである。 — location: [1168](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1168) ^ref-24162 --- カスタマイズ・ニッチは、完全オーダーメイドに基づく製品・サービスを提供する戦略である。 — location: [1191](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1191) ^ref-25655 --- 製品・サービスの規模が小さいだけでなく、当該市場に参入するための壁があったり、また既存顧客が後発企業の製品・サービスに切り替えてもらうコストが大きかったりする場合、リーダー企業は同質化をしかけにくい。 — location: [1229](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1229) ^ref-53558 --- そのためニッチ戦略をとる企業が成長していくためには、①マルチ・ニッチ戦略、②チャレンジャーへの転換の2つの方法が考えられる。 — location: [1315](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1315) ^ref-7416 --- 第2のチャレンジャーへの転換は、ニッチ戦略によって利益を蓄積した後に、その経営資源をもとに差別化戦略に移行し、リーダー企業と戦っていく戦略である( — location: [1385](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1385) ^ref-38876 --- うち、同質化したいのにできない場合(will & can’ t)と、同質化できるのにしたくない場合(can & won’ t)に、リーダー企業の組織には不協和(ジレンマ)が生じる。 — location: [1487](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1487) ^ref-29501 --- 企業の持つ資産には、企業側に蓄積された「企業資産」と、顧客側に蓄積された「市場資産」(製品、ソフトウエア、企業イメージ等)の2種類がある。これらの資産を「持っている優位性」が、戦略の足枷になる現象を「資産の負債化( 6)」と呼んでいる。 — location: [1503](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1503) ^ref-47090 --- ①「企業資産の負債化」、②「市場資産の負債化」、③「理論の自縛化」、④「事業の共喰化」と呼び、 — location: [1520](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1520) ^ref-5749 --- 企業資産の負債化は、組み替えの難しい企業資産(ヒト、モノ、カネ、情報)、および企業グループが保有する資産(系列店、代理店、営業職員等)が、競争上価値を持たなくなるような戦略を打ち出すことによって、リーダーが同質化できない状況に追い込む戦略である。 — location: [1525](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1525) ^ref-61474 --- 市場資産の負債化は、リーダー企業の製品・サービスを購入してきたユーザーや、ユーザー側に蓄積され、組み替えの難しい資産(製品、ソフトウェア、スペアパーツ、企業イメージ等)が、競争上価値を持たなくなるような戦略を打ち出すことによって、リーダー企業が同質化できないようにする戦略である。 — location: [1557](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1557) ^ref-59161 --- 論理の自縛化は、これまでリーダー企業が顧客に対して発信していた論理と矛盾するような戦略を打ち出すことによって、安易に追随すると大きなイメージダウンを引き起こすのではないかと、リーダー企業内に不協和を引き起こす戦略である。 — location: [1609](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1609) ^ref-59823 --- 事業の共喰化は、リーダーが強みとしてきた製品・サービスと共喰い(カニバリゼーション)関係にあるような製品・サービスを出すことによって、リーダー企業内に追随すべきか否かの不協和を引き起こす戦略である。 — location: [1665](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1665) ^ref-48531 --- 不協和戦略のためには、リーダー企業の「強み」としてあきらめていたものを一転「弱み」にすることを考え、逆に「弱み」としてあきらめていた自社の資源を「強み」に転化させていく逆転の発想が求められる。 — location: [1723](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1723) ^ref-29378 --- 第1に、リーダー企業が強みとしていた競争の源泉を複数探していき、それを1つずつ負債化していくことが必要である。 — location: [1747](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1747) ^ref-45850 --- 第2に、顧客を教育して賢くし、「情報の非対称性」を下げ、同時にバリューチェーンをアンバンドリング(解体)していくことが求められる。 — location: [1749](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1749) ^ref-26491 --- 協調とは、「各社の強みの差が、結果に直接的な影響を及ぼすような無駄な争いを排除するもの( 5)」と定義される。協調戦略とは、競合企業とできるだけ競争をしないで共存を図る戦略と言える。 — location: [1781](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1781) ^ref-12420 --- ①のコンピタンス・プロバイダー(Competence Provider)とは、競合企業とは競争するバリューチェーンを持ちながらも、自社のコア・コンピタンスとなっている機能に関して、競合企業から積極的に受託し、そこで利益を上げていく戦略である。 — location: [1885](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1885) ^ref-36277 --- ②のレイヤー・マスター(Layer Master)とは、競合企業の一部の機能を代替し、そこで寡占を作ろうとする戦略である。 — location: [1889](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1889) ^ref-10881 --- ③のマーケット・メーカー(Market Maker)とは、相手企業のバリューチェーンの中に新たな機能で入り込み、相手企業と協調しながら市場を形成していくプラットフォームを作る戦略で — location: [1898](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1898) ^ref-33961 --- ④のバンドラー(Bundler)とは、新たな機能を追加する上で、競合品も自社の製品ラインに入れることによって顧客価値を高め、同時にそれによって同種の競合の参入障壁を高める戦略である。 — location: [1904](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=1904) ^ref-58348 --- マーケット・メーカーとは、相手企業のバリューチェーンの中に新たな機能を追加することによって中小企業の市場形成に寄与し、顧客価値を高め、新たな市場を作る戦略である。 — location: [2144](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=2144) ^ref-42387 --- バンドラーとは、コンピューターの「マルチベンダー」のように、新たな機能を追加する上で他社品も組み込み、顧客価値を上げると同時に、競合他社が同じ事業をやることに対して参入障壁を高める方法である。 — location: [2337](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=2337) ^ref-16626 --- ニッチ企業においては、こうした尺度よりも、売上高総利益率、売上高営業利益率、顧客シェア、顧客リピート率、顧客満足度、マインド・シェア(顧客の心の中に占める特定ブランドの占有率。純粋想起率を代理指標とすることが多い)のような指標を重視すべきであろ — location: [2618](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=2618) ^ref-15871 --- 終わりのないオセロゲーム」が続くという前提で、環境変化を先取りしていかなくてはならない。 — location: [2633](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=2633) ^ref-33208 --- の協調戦略に関しては、何をもって他社との協調の武器とするかのコア・コンピタンスの見極めが非常に難しい。自社でコア・コンピタンスと信じているものが、本当に協調の武器になるかは、実際にやってみないとわからないことが多いからである。 — location: [2634](kindle://book?action=open&asin=B011BK4TQI&location=2634) ^ref-6388 ---