# デザイン思考が世界を変える〔アップデート版〕 イノベーションを導く新しい考え方
## Metadata
* Author: [ティム ブラウン、千葉 敏生](https://www.amazon.comundefined)
* ASIN: B081H5K3TQ
* Reference: https://www.amazon.com/dp/B081H5K3TQ
* [Kindle link](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ)
## Highlights
イノベーションは、三つの空間に分けて考えることができる。「 着想」は、ソリューションを探り出すきっかけになる問題や機会。「 発案」は、アイデアを創造、構築、検証するプロセス。そして、「 実現」は、アイデアをプロジェクト・ルームから市場へと導く行程だ。 — location: [312](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=312) ^ref-59106
---
このプロセスは反復的で非直線的な性質を持つ。それはデザイン思考家が無秩序で支離滅裂だからではない。基本的に、デザイン思考は探求のプロセスだ。 — location: [317](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=317) ^ref-43866
---
相反するさまざまな制約を喜んで(時には熱烈に)受け入れることこそ、デザイン思考の基本といえる。多くの場合、重要な制約を見分け、その制約の評価の枠組みを制定するのが、デザイン・プロセスの最初の段階だ。制約は、成功するアイデアの三つの重なり合う条件と照らし合わせると理解しやすい。それは、「 技術的実現性」(現在またはそう遠くない将来、技術的に実現できるかどうか)、「 経済的実現性」(持続可能なビジネス・モデルの一部になりそうかどうか)、「 有用性」(人々にとって合理的で役立つかどうか)の三つだ。 — location: [346](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=346) ^ref-6703
---
デザイナーの仕事は、ピーター・ドラッカーの見事な表現を借りれば、「ニーズを需要に変える」ことだ。 — location: [680](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=680) ^ref-36902
---
デザイン思考家」の仕事とは、人々が自分でさえ気付いていない内なるニーズを明らかにする手助けを行なうことだ。 — location: [696](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=696) ^ref-19585
---
本章では、成功する — location: [699](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=699) ^ref-34413
---
の三つの要素に注目したいと思う。それは、互いに相乗効果を持つ「 洞察」、「 観察」、「 共感」という三つの要素だ。 — location: [699](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=699) ^ref-8478
---
「洞察」は、デザイン思考の主要な要素のひとつだ。洞察は一般的に、すでに私たちの身の回りにあるものを測定し、すでに私たちの知っていることを明らかにする、定量的データから得られるものではない。より優れた出発点は、現場におもむき、通勤者、スケートボーダー、看護師が日常生活をどうやりくりしているかを実際に観察することだ。 — location: [703](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=703) ^ref-33176
---
「デザイン」が「デザイン思考」へと進化するにつれて、デザイナーの活動は「製品の創造」から、「人と製品との関係の分析」、さらには「人と人との関係の分析」へと進化を遂げてきた。 — location: [721](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=721) ^ref-62361
---
デザイン思考の役割とは、観察から洞察を、そして洞察から生活に役立つ製品やサービスを生み出すことなのだ。 — location: [838](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=838) ^ref-14292
---
これらの疑問は、私たちのいう「隠れた」ニーズ、つまり切実ではあるものの人々がうまく言葉にできないニーズを把握する上では欠かせない。 — location: [894](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=894) ^ref-56421
---
機能的・認知的な理解に加えた三つ目の理解は、感情的な理解だ。感情的な理解は、人々の感情に訴えかけるアイデアを考案する際に欠かせない役割を果たす。対象となる母集団の人々はどのような感情を抱いているのか? 何に心を揺り動かされるのか? 何に刺激を受けるのか? 政党や広告代理店は、昔から人々の心の弱みを利用してきたが、「感情的な理解」は、企業が顧客を敵に回すのではなく味方に付けるきっかけにもなりうるのだ。 — location: [919](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=919) ^ref-47125
---
共感があったとしても、デザイナーの間では「市場」は「多くの個人の集合」という考え方がいまだに優勢だ。デザイナーがグループ同士のインタラクション(相互作用)の仕方にまで考えを広げるケースは少ない。一方、デザイン思考家は一歩先に進み、全体は部分の総和よりも大きいという前提を出発点にしている。 — location: [949](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=949) ^ref-45646
---
私たちに必要なのは、創造者と消費者の境界を融合させる、斬新で奇抜なコラボレーション形態を生み出すことだ。デザイン思考家は、「消費者に対する私たち」であっても、「消費者を代表する私たち」であってもならない。「消費者と手を取る私たち」でなければならないのだ。 — location: [983](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=983) ^ref-32565
---
したがって、今のところもっとも大きな機会が潜んでいるのは、「企業が新製品を作って消費者が受動的に消費する」という二〇世紀の考え方と、「消費者自身が必要なものすべてをデザインする」という未来的なビジョンの中間の領域といえよう。 — location: [1008](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1008) ^ref-21366
---
その領域では、創造者と消費者の「コラボレーション」の度合いが増し、企業と個人の両方のレベルで境界があいまいになる。個人は、「消費者」、「顧客」、「利用者」といったステレオタイプな位置付けではなくなり、創造プロセスの能動的な参加者とみなされるようになる。同じように企業も、「私有」と「共有」、「組織」と「消費者」の境界の融合を受け入れる必要があるだろう。消費者の幸福、安らぎ、快適性が企業を成功に導くからだ。 — location: [1011](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1011) ^ref-8565
---
観察の手法、共感の原則、個人の枠を飛び越える努力などは、すべてデザイン思考家が洞察を得る心構えをするための方法と考えられるだろう。こうした洞察は、一見すると平凡な物事から奇妙な物事まで、日常生活の習慣からその習慣を脅かす例外的な物事まで、あるいは平均的な人々から極端な人々まで、さまざまな場所に転がっている。少なくとも現時点では、このような洞察を体系化・定量化することはおろか、定義することさえできない。したがって、洞察を得ることは、デザイン・プロセスのもっとも厄介な部分でもあり、もっとも興奮する部分でもあるのだ。洞察がいつどこで生まれるのかを予知できるアルゴリズムなど、存在しないのである。 — location: [1047](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1047) ^ref-64630
---
デザイン・チームはプロジェクトの過程で重なり合う三つの空間を行き来する心構えを持つべきだ。考えうるありとあらゆる情報源から洞察を収集する「 着想」という空間。その洞察をアイデアに置き換える「 発案」という空間。最善のアイデアから具体的で緻密な行動計画を生み出す「 実現」という空間。これらは、厳格な方法論に従った手順というよりも、重なり合う「空間」と言った方が正しい。洞察が予定どおりに得られることはめったにないし、どんなに都合の悪いときでも、機会が訪れたらつかまなければならない。 — location: [1073](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1073) ^ref-32481
---
あらゆるデザイン・プロセスは、さまざまな期間を循環している。無秩序な実験と突然のひらめきを繰り返す曖昧模糊とした期間。ビッグ・アイデアに思いを巡らす期間。細部にすべての集中が注がれる長い期間。そして、これらの段階では、チームの気分も必要な戦略もそれぞれ異なる。それを理解しておくことは、チームの士気を保つためにも重要なのだ。 — location: [1079](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1079) ^ref-55332
---
デザイン思考を体験するということは、「収束的思考」、「発散的思考」、「分析」、「綜合」という四つの心理状態の間でダンスをするということに等しい。 — location: [1097](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1097) ^ref-18140
---
収束的思考は、既存の選択肢の中から判断を下す場合には実用的な方法だ。しかし、未来を探求したり、新たな可能性を生み出したりする場合には、収束的思考ではうまく いかない。 — location: [1108](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1108) ^ref-43269
---
しかし、現実的になることも必要だ。選択肢が多いほど複雑さは増し、物事は難しくなる場合がある。特に、予算やスケジュールの管理を仕事にしている人々にとってはそうだ。大半の企業は、問題や選択肢の範囲を絞り、明確で漸進的な方法を重視する傾向がある。こういったやり方は、短期的に見れば効率的かもしれないが、長期的に見れば、組織は保守的になり、柔軟性を失い、競争を一変させる他社のアイデアに太刀打ちできなくなる可能性が高い。したがって、発散的思考は、イノベーションにとって障害物ではなく、むしろ近道なのだ。 — location: [1118](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1118) ^ref-43666
---
デザイン思考家のプロセスは、発散的思考と収束的思考をリズミカルに行き来するようなものだ。そして、その行き来を繰り返すほど、あいまいさは低下し、具体性が増していく。 — location: [1125](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1125) ^ref-35838
---
いずれにせよ、デザイナーは物語の達人と考えることができる。説得力や一貫性があり、信頼できる物語を築き上げる能力が問われるの — location: [1157](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1157) ^ref-8213
---
デザイン思考のメンタル・マトリクスをマスターした個人、チーム、組織に共通するのは、基本的な実験意欲である。つまり新しい可能性に心を開き、新たな方向性に目を向け、常に新たなソリューションを提案することに意欲的なのだ。 — location: [1178](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1178) ^ref-44600
---
実験を奨励する組織には、何の成果にもつながらないプロジェクトや、組織の歴史を知る人々が話題にしたがらないプロジェクト(世界初のPDAのアップル・ニュートンなど)もあるだろう。しかし、こういった取り組みを「無駄」、「非効率的」、「冗長」とみなすのは、イノベーションよりも生産性を重視する文化や、漸進主義という負のスパイラル — location: [1195](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1195) ^ref-27694
---
に陥る危険性のある企業の特徴ともいえる。 — location: [1199](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1199) ^ref-16170
---
①最善のアイデアが生まれるのは、デザイナーやエンジニアだけでなく、もちろん経営陣だけでもなく、組織の生態系全体に、実験を行なう余地がある場合だ。 ②変化しつづける外的要因(新技術、顧客基盤の変化、戦略上の脅威やチャンス)にもっともさらされている人々こそ、状況の変化に対応するのにもっとも適していて、さらに対応する意欲 — location: [1210](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1210) ^ref-62023
---
を持っている。 ③アイデアの良し悪しは、誰がそのアイデアを発案したかに基づいて判断してはならない(この原則は、声に出して繰り返してほしい)。 ④ 口コミ を生み出すアイデアを優先すべきである。アイデアは、組織の支持を得る前に、どんなに小さくても、生の声による支持を得るべきである。 ⑤アイデアを育てたり、切り落としたり、採り入れたりするには、上層部の「園芸」スキルが必要である。MBAはこれを「リスク許容度」という言葉で表現している。私はこれを「 トップダウン的要素」と呼んでいる。 ⑥組織に方向感覚をもたらし、イノベーターが常に指示を待たずにすむように、包括的な目標を明確にする必要がある。 — location: [1214](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1214) ^ref-57928
---
デザイン思考の力を活用するには、個人、チーム、組織全体で楽観主義を養う必要がある。誰もが、満たされていないニーズに応え、世界に好影響を及ぼす画期的なアイデアを生み出す力が自分にある(少なくとも、チームにある)と信じる必要があるのだ。 — location: [1260](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1260) ^ref-44302
---
つまるところ、デザイン思考とは、インテグレーティブ・シンキング(統合思考)を行なう能力なのだ。 — location: [1411](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1411) ^ref-56617
---
た著書『インテグレーティブ・シンキング』で、マーティンは「相反する考えを対比させて新しい解決策を導く思考ができる人は、ひとつの考えしか追えない人よりも、困難な問題に取り組むときに優位に立てる」 — location: [1416](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1416) ^ref-51071
---
インテグレーティブ・シンキングができる人々は、問題にとって重要なポイントの範囲を広げる方法を知って — location: [1418](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1418) ^ref-33727
---
AかBか」を嫌い、「AもBも」を重視する。非直線的な関係や多方向の関係を矛盾ではなくインスピレーションの源泉と見るの — location: [1419](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1419) ^ref-62125
---
実験を歓迎する態度は、クリエイティブな組織の血液ともいえるものだが、プロトタイプ製作(とりあえずプロトタイプを製作してみようという態度)は、実験意欲の最大のあらわれである。 — location: [1458](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1458) ^ref-48877
---
というと、製造直前の製品の完成モデルを思い浮かべがちだが、その定義をプロセスのもっと初期の段階まで拡大する必要があるだろう。 — location: [1460](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1460) ^ref-37871
---
プロトタイプ製作を用いると、プロジェクトを迅速化させられるだけでなく、さまざまなアイデアを並行して模索することができる。 — location: [1485](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1485) ^ref-48350
---
初期のプロトタイプは簡素で、ラフで、安上がりな方がいい。アイデアにかける投資が大きくなるほど、そのアイデアにのめり込むことになる。高度なプロトタイプを製作するために過剰な投資を行なうと、ふたつの悪影響がある。ひとつ目は、平凡なアイデアが実現に近づきすぎてしまうということだ。最悪の場合には、最終段階まで進んでしまう。ふたつ目は、最小限のコストで、より有望で斬新なアイデアを発見する機会を生み出すという、プロトタイプ製作の本来の目的が損なわれてしまうということだ。 — location: [1486](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1486) ^ref-24088
---
プロトタイプには、役立つフィードバックを得てアイデアを前進させるのに必要な時間、労力、投資さえかけてやれば十分だ。プロトタイプが複雑で高額になるほど、「完成品」に近づいてしまい、建設的なフィードバックが得にくくなるばかりか、フィードバックに耳を貸すのが難しくなる。プロトタイプ製作の目的は、実用的な模型を作ることではない。アイデアを形にし、強みと弱みを明らかにし、より精巧で緻密な次世代のプロトタイプの方向性を明らかにすること — location: [1498](kindle://book?action=open&asin=B081H5K3TQ&location=1498) ^ref-43092
---